古都奈良の古本屋 智林堂書店のブログです。店主代理が綴る、本と人との一期一会な日々♪      近鉄奈良駅から徒歩5分ほど、もちいどの商店街内。不定休。11時から18時半頃。0742-24-2544


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カテゴリ:本日の図書館本( 13 )

d0105133_22394345.jpg北村薫ファンだからこそ。
ここ数年は、あら?おかしいな??と思っていたわけです。
スランプなのか、方向性を転換しちゃったのか、と。
だから、これを読んで少し安心しました。


『1950年のバックトス』 北村薫

1995年から2007年までの短編&掌編集です。
やっぱりこの中にも、あらら??という作品は混ざっているのですが、さすが!と嬉しくなるものの方が多いのです。
23編もあるので、味わいはいろいろ。
私は「包丁」「真夜中のダッフルコート」「昔町」「洒落小町」「凱旋」「1950年のバックトス」「林檎の香」などが好み。
派手さはないけれど、後々まで心に残る印象深いアイディア。
くふっと軽く笑わせてくれるユーモア(駄洒落あり)。
北村作品ならではの、優しさ。

特に表題作の「1950年のバックトス」。
少年、母親、おばあちゃん。そして野球。
野球には全然くわしくない私にも確かに見えた、鮮やかな一瞬。
見事です。

本当は長編でじっくり堪能したい、北村薫。
今後復調してくれることを楽しみにしつつ。

星3つで!☆☆☆
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by nara-chirindo | 2008-08-21 23:47 | 本日の図書館本

寄贈本ロマン

今日の朝日新聞夕刊に、図書館に関する気になる記事がふたつ。

「寄贈本 図書館ジレンマ」 
財政難のため、市民から寄贈を募る図書館。
でも実際持ち込まれるのは廃棄処分するしかないような本が多い。
千葉の図書館では約3万冊寄贈されたうち、蔵書になったのは約6千冊。
図書館が本の処分を代行しているようなものだと嘆く声も。

「曾根崎心中初版 初の完本」
近松門左衛門の人気浄瑠璃「曾根崎心中」初版本の完本が、富山県黒部市立図書館で見つかった。
同市の旧家が市に寄贈した古文書の中にあったとか。

 
寄贈、あなどれませんね〜。
1700年頃の書物が完全な形で発見されるとは。
しかもこれだけ有名な曾根崎心中の初版本。
近松研究者はさぞ色めきたっていることでしょう。

こんな大物が掘り出される可能性がまだあるなんて、ロマンだと思うんですよね。
それは古本屋にもあり得ない話じゃないあたりがまたしびれます。
生涯でたった一度でも、そんな掘り出し物ができたなら。
図書館関係者にしても古本関係者にしても、冥利に尽きるというものじゃないでしょうか。
今はまだどこかの蔵で眠っているお宝本に、お目にかかれる日が智林堂にも訪れますかどうか。
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by nara-chirindo | 2008-07-12 22:30 | 本日の図書館本
d0105133_2223522.jpg読みました。一気に。

『チーム・バチスタの栄光』 海堂尊

これは予想以上に面白かったですよ。
第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品です。
著者は現役の勤務医さん。
専門的な医療用語ばっかり出てきて小難しいんじゃないの、あるいは病院内の単なる暴露本なんじゃないの、なんて思いつつ読み始めました。
が、話に巻き込まれるうち、そういう思いはすぐに消えました。
モデルがあろうとなかろうと、この人物造形はすばらしい。
いわゆる、「キャラが立っている」というやつです。

書評家吉野仁氏による選評の中に、こんな言葉がありました。
「プロの作品でさえ読み終えた後登場人物の名前を記憶している例は少ないが、本作の主役、田口と白鳥の名はしっかりと心に刻まれた」
その通りなんです。
ここ最近読んだ別の本の主人公の名前は・・?と考えてみても、まったく覚えてないんです。
でも、田口、白鳥、桐生、高階・・。
キャラが強烈すぎて、忘れようにも忘れられないです。

難点をあげるなら、冒頭だけは少々わかりづらい。
それと同じ単語、同じ言い回しがやたらと出てくるあたり、もう少し洗練されれば良いのにな、と。
あとミステリとして読むとちょっと弱いかも。

それでもやっぱり、よく出来ています。お見事です。
星4つで! ☆☆☆☆
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by nara-chirindo | 2007-09-18 23:11 | 本日の図書館本

図書館の10分

私が愛してやまない某市立図書館には、地下に駐車場があります。
20分まで無料で、1分1秒でもオーバーすればたちまち300円。
このシステムのおかげで、私は好みの本を見つけだす腕をあげたような気がします。
旧式エレベーターの昇り降りの時間やら何やらを考えると、本を選んでいられるのは正味10分ほど。
まずは馴染みの作家の新刊が出ていないかチェックしつつ、全体を流して目につく本をパラパラ。
何かしら惹かれるものがあれば即決定。
聞いたこともない作者名なのにタイトルと装丁で妙にアピールしてくる本があれば、それはたいてい新人文学賞受賞作。
新人だけに荒削りで完成度は低いこともあるけれど、勢いは素晴らしい。
ベテラン作家にはもう描けない世界を楽しませてくれるものが多いので、これまた即決。

昨日借りてきた5冊の中には、たまたま「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品が2冊混ざっていました。
『チーム・バチスタの栄光』と『ブレイクスルー・トライアル』。
(余談ですが「このミス」大賞の賞金は1200万円ですって・・!)

まあこんなやり方は慌ただしいというかせわしないので、じっくり選びたい時は自転車で行くことにしています。
急ぐとハズレを引く場合もありますものね。

今回の5冊は当たりかハズレか・・?
このブログをアップし終えたら読み始めます。
秋の夜長に読む新進ミステリ。
しみじみ、幸せだなぁ。
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by nara-chirindo | 2007-09-14 22:48 | 本日の図書館本

図書館本 『海の仙人』

d0105133_20422528.jpg今日の午前と午後、1日に2回も図書館へ行ってしまいました。
どんだけヒマやねん。。。

最近、女性作家の本ばかり借りています。
その中のひとつ。

『海の仙人』絲山秋子


絲山秋子はしばらく前から読み始めて、これで5冊目ぐらいでしょうか。
それぞれにまあまあ面白い、とは思うのに、読後にほとんど印象が残らなかったんです。
うまいんだけれど何か足りないような。
どの作品にもさりげなく、ちょっと変わった外車が絡んでくるのが女性作家には珍しくて、そこは私的にポイント高しなのですが。

この作品は「ファンタジー」の存在が効いています。
もうそれだけで、ありがちな小説群から頭ひとつ抜けたかな、と。
主人公の大阪弁も滑らかだし。
脇役「片桐」がいい味。
絲山作品の中では一番気に入りました。

最高傑作、と言い切れるほどではないということで。
辛めに、星3つ!☆☆☆
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by nara-chirindo | 2007-09-05 21:20 | 本日の図書館本

図書館本『太陽の塔』

d0105133_22284219.jpg読まず嫌いをしていた森見登美彦。
けっこう良いのに、と数人から聞いていました。
今号の『ダ・ヴィンチ』で特集もされていることだし、そろそろ頃合いかと思って読んでみました。
デビュー作『太陽の塔』。
いきなり買わず、まずは図書館で借りる用心ぶりですが。。。

そもそもなぜ避けていたかと言えば、同じような時期に売れだして並び評されることも多い、某作家と同系列の作風なんだろうと思い込んでいたからです。
そちらは前評判につられ勢い込んで新刊を購入したものの、速攻で売り払った(智林堂に・・)というシロモノだったので。

結論を言えば、似てなんかいませんでした。
当たり前のことながら、全然別の作品。
まず文章がうまいですし。
無駄を削った、頭の良い人の文章だなと思いました。

内容は京都の大学生もの。
プッと噴き出す面白さではなく、にやりにやりとさせられます。
この自虐なのかそうではないのか、きわどい所で迷走しながらも同情は受け付けない誇り高き妄想男子たち。
ある意味魅力的。
マッチョ思想男子よりよっぽど好感もてます。
愛すべき名脇役は飾磨君に一票。

薦めてくださった皆さん、ありがとう。
モリミィ、確かに面白いです。
他の作品も一気に読んでしまいそう。

星は4つで!☆☆☆☆
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by nara-chirindo | 2007-08-23 23:44 | 本日の図書館本

夜更かしの途中経過

昨日話題にした『だれも知らない小さな国』、どうしても読み返したくなって図書館へ。
こんなに続編が出ていたのですね。
知らなかった。
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図書館で6冊?なんで?
と思った方はするどいですね。
家族のカードまで流用して、私は最大20冊まで借りられるんですのよ。
やめてくれ、と言われておりますが。

ところでこのシリーズ、児童向けにしては結構読み応えがありまして。
今まだ3巻の途中なのです。
夕方から読み始め、いつの間にやらもう11時か。
半端なとこでやめたくないし・・。
ということで今晩は夜更かし決定!
明日の店番は、目の下にクマができてることでしょう。
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by nara-chirindo | 2007-08-04 23:15 | 本日の図書館本

ばっさり!

昨日から文学賞のあれこれを考えていたら、この本を読みたくなって図書館にひとっ走りしてきました。
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『文学賞メッタ斬り!』 大森望 豊崎由美
『文学賞メッタ斬り!リターンズ』 大森望 豊崎由美
『作家の値うち』 福田和也

面白い!
面白いですわ〜。
毒舌が冴えわたってます。
大きな賞を受賞してようと、つまらない作品はつまらない。
そのあたり、ばっさり。
大御所選考委員達のワケのわからなさも、ばっさり。

何様?という一方的な書きっぷりに反感をもたれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
でもちゃんと読んでいるからこそ言える好き放題。
最後まで読んだ上での批判には耳を傾ける価値があります。
読みもせずにしょうもなそう、なんて言って遠ざけることだけはするまいと私も常々心掛けています。

これからも次から次へと出版される、玉石混淆の新刊本の群れ。
私も私なりの、私だけのものさしをしっかり持って渡り合っていきます。
刀ほどの斬れ味はないけれど♪



 
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by nara-chirindo | 2007-07-06 15:53 | 本日の図書館本
d0105133_18594313.jpg連休の反動か、今日はあまり売れ行きが伸びませんでした。
開店から2時間たってもやっと文庫本2冊、計400円。
どうしようかと思いましたよ。
その後はなんとか持ち直したのでよかったのですが。
まあこういう日もありますよね。

さて、私は休みの日より平日の方が読書効率があがるので、ここ2日でだいぶペースが戻ってきました。
昨日読み終えた図書館本がこちら。

『しゃぼん玉』 乃南アサ著

乃南アサ、初期は女性向き恋愛がらみミステリが多かったようですが、だんだんテーマがハードになってきた印象があります。
少年犯罪を題材にした小説は、この数年でいろんな人がいろんなアプローチで書いています。
でも大概は、すっきりとした解決には至らないもやもやとした読後感が残るように思います。

その中にあって、この作品は無理のない形で救いが示されていることを評価したいです。
無軌道な少年が、温かい人情に触れて更生する過程。
そんなうまくいくかいなと思われがちなストーリーを、作者の力量で説得力を失わずに最後まで読ませます。
脇役ではシゲ爺が秀逸。

惜しむらくは、主人公が気付いたら九州の山奥まで来ていたという点と、曲がりなりにも大学受験を突破している設定なのに無学すぎる点、つじつまが合わなさすぎます。
細部にまで神経が行き届いていてこそ、全体の味わいも深くなるというものですよね。
文庫化の際に、作者による加筆・訂正がなされることを願いたいです。

そんなこんなを総合して、星3つぐらいで! ☆☆☆
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by nara-chirindo | 2007-05-08 19:52 | 本日の図書館本
d0105133_19571588.jpg最近、図書館本にあまり当たりが出なくて、このコーナーは随分間があいてしまいました。
たとえ私にとっては面白い本であっても、まがまがしい内容だったりするとこういう場で紹介するのもどうかと思いますし。
そんなわけで、おっこれならまあまあ、と久々に思えた本がこちら。

『光って見えるもの、あれは』 川上弘美著

全作品は読んでいないのでえらそうなことも言えないのですが、川上弘美の書くものはどろどろしている、というイメージを持っていました。
表面的にはさらりとしているようでいて、奥底で情念がとぐろを巻いているような。
いやいっそあからさまなどろどろならそれはそれで嫌いじゃないのですが、なんとなく肌に合わん、と思っていた作家の一人でした。

でもこの作品はちがいましたよ。
意外でした。
主人公が女性ではなく男性、そして高校生というのが良かったのでしょうか。
理知的かつ内省的な高校生。

思春期にある若者が、恋・友情・家族に揺さぶられつつ自分とは、と悩むいわば青春小説、私はけっこう好きです。
それは自分も悩み抜いてきたことだからだろうし、未だに抜けきれていない部分もあるからだろうと思います。
ただ、あまりに紋切り型だったりクサくなりすぎた物語では到底共感できないわけで、そこは作家の力量次第ということになります。

この主人公は、自分の立ち向かうべき問題が実は「細かいチャチなこと」とわかっている醒めた視点もしっかり持っていて、やたらと翻弄されるばかりではないところに好感をおぼえます。
脇役中の好人物は祖母の匡子。
次点で平山水絵。

この作品に限っては、奥底にはどろどろしたものではなく、さっぱりとしたユーモアが感じられます。
そして今回あらためて思いました。
川上弘美は文章がうまい。
言葉の選び方がうまい。
食わず嫌いしかけていた作家を、もう一度見直すことができて良かった!

インパクトには多少欠けるので、星3つぐらいで。☆☆☆
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by nara-chirindo | 2007-04-28 20:54 | 本日の図書館本